濃い宵の味
「誤ってハサミの刃の方を握ってしまいました。血まみれです。」
声の元へ向かうと、同居人がパンツ一丁で指先を洗い流していました。彼は死ぬのでしょうか。
昨日、私は2人の友人と暮れの新宿で落ち合い、シャッター街と化した地下道を通ってラーメン屋へ向かいました。歌舞伎町にある姫路発祥のラーメン、『ずんどう屋』です。
最近胃が小さくなったのか、ラーメンは並盛で満足していたけれど、昨日は食うぞおと意気込んでいたので、はじめから替え玉を注文。店で豚骨ラーメンをすする回が、早いスパンで続いている。
先週の赤坂屋は家系に近い豚骨醤油だったが、こちらはスタンダードな方向性の豚骨。券売機で麺の固さや背脂の量を設定できるのも嬉しく、ねぎが旨い。友人たちは2人ともねぎラーメンを頼んでいた。
席に据置されている高菜がまた美味しくて、皆で「これで元をとるぞぉ」とモリモリ食べ、塩辛い口に水を流し込む一連の動作を繰り返しました。
新宿歌舞伎町店、時短要請に従い閉店は20時ですが、開店は朝の5時だそうです。めちゃめちゃ頑張ってる。
酒類が提供されなくても、私たちは席があれば盛り上がれるもので、完食した後も話し込みました。(ずんどう屋の皆さんありがとう)実写版さくらばのダベリバですね。
会社は真面目な人間ばかりのようで(そりゃそうじゃ)、抑圧から解放されるようにふざけてくれました。
2人の仕事の愚痴なんかを聞くものだと思っていたら、あえて自分の話は控えめにしていたようで、そもそもまだ愚痴がこぼれるほど月日は経ってないようで、地に足がつかない私のことばかり心配してきました。ありがたいことだと思いますけどね。結局「こうしていくわ」というのは明言できなかった。
さらに2人はこのブログを読んでいるらしく、これまでの中身を見て「野心がすごいよな」と。そして「周囲を俯瞰しているんだけど、さくらば自身のことが見えてこない」「KEEP OUTが貼られてる」とのこと。そう感じますか皆さん。
ものは言いようで、2人とも頑張って言葉を選んでくれてるなあ、と感じた。決めつけて短絡的な結論を求める人間が多い中で、思慮深い人が近隣にいてよかった。
立入禁止的なものは確かに自分の中にあるなーとわかっていて、彼らはそれを打ち壊し突入しようという固体ではなく、液体としてちょろんと流れ込んできた感じ。
小説を考察するかのような心配をこれ以上かけないようにしたいですね。あとはテンションをちゃんと制御して、「あ、テンション高い! 今は躁だな」とか思われないようにしようと思います。
真っ暗な店舗と、堂々煌々と営業する店舗が立ち並ぶ歌舞伎町を、「あぶねー」と怖がりながら通り過ぎる。きっと私たちの背中は、こどもの目にはサラリーマンとして映っている。
青年からおじさんに成るための儀式が、これからどこかであるんじゃないか、そう思い込みたいのだけれど。