何かを落とした手は、今何を握ってる?
鍵を落としました。
……昨日のことです。昨日書き忘れることができたということは、無事見つけたということですね。
夜勤からの帰路。休息を求める心身、私を包む鮮烈な日光・湿度に只々つらみを覚えながら、「あー冷房付いてないんだよなー、帰ったとて生き返るわけじゃないんだよなー」、そう空で言って、ドアの前でポッケをまさぐるといつもある感触がない。なんか下ネタみてえだな。鍵ですよ? 男のままですよ?
もう「うわあ」ですよね。「やったわ」って。ものよくなくす人は共感してくれるはず。これまでの人生、チャリ鍵やロッカー鍵の紛失はあれど、家鍵はなかったのに。鍵って落としちゃいけないのに落とすためにできてます、みたいな作りしてるよね。
急に下がる体温。でも今は求めてないクールビズ。ドアの前で荷物全部ぶちまけ、ない。来た道を振り返る。おいおいおい、どこで落としたのかな? いつもだったら⁉️をつけられるのに。太陽が白く、高くなってきちゃったよ。勘弁してくれよ。またチャリにまたがり、同じ道を目を凝らしながら戻ります。
結局店まで見当たりません。店に入って、「鍵落ちてませんか」と尋ね、副店長と5、6分、店中を探したけれど見つからないの。
そんなことがあってたまるかよ!!! 光を跳ね返してキラキラしてて、物珍しさに、猫なんかが、持っていっちゃったのかな⁉️ 翌日だからこんなこと書けますが、当時そんなこと考える余裕などあるわけがない。
こっちは鍵なくて大焦りしてるのに、一緒に探してる人は自分は鍵落としてないことによる余裕が滲んでるの、いやだよなあ。じゃあどうすれば満足するんだお前は。いえいえ、感謝してますよ。副店長もしっかり探してくれましたし。
でも鍵がないの。家に入れないのよ、このクソ暑大東京で。しかも僕もう眠いんだ。なんだって神は私に試練ばかり出すんだ。試練の分褒美も渡されたなんて、そんな感覚0なんだが。
道端をしらみ潰しに探すしかないか。覚悟を決めて自転車に手をかけると、
自転車のそばに鍵は落ちていました。
音の鳴るストラップつけてたから、落としたら気づくはずなんだよ。
でも日頃の駐輪場は砂利でできててね。どおりで落としても音がかき消されたわけだ。
大事な紛失物拾ったときって安堵以外の思考が0なので、ここから書き足すことはありません。
チェンソーマンの作者、藤本タツキ先生の読切『ルックバック』が、公開と共に爆発的拡がりを見せましたね。2時頃休憩に入りSNSを見たら、もうトレンドをしていました。
で、私も読む。3ケタページとは思えない体感時間で読んだ。とんでもない熱量を持った作品に触れた時の「うわあ」が久々に出た。で、「すごい、すごい」だけじゃなく、自分の人生の道の上に置いて、物思いに耽る時間が始まってしまった。えげつない作品たる証拠だ。
「チェンソーマン」「藤本先生」「ジャンプ+」、どのトレンドに飛んでも作品が見られるリンクが貼られ、そして、読者の長文解説が並んでいた。Don't look back in angerになってるだとか、ここが映画的演出でこうで最高だとか、主人公の心理描写が突き刺さって動けなくなっただとか。
自分の作品がこれだけ深く読み込まれて、一瞬でこれだけの量の思いを咲かせてくれたら、どれほど嬉しくて爆ぜるだろうか、と思う。ただ、その最早専門家の解説になった感想の山を見て、「完敗」だの「自分には才能がない」だの言って勝手に負けてる人々を見て、心苦しくなってしまったのも事実だった。
長文の感想をツイートできなくたっていい。クリエイターだからって、リツイートや反応をしなければいけないわけじゃない。そして、勝手に負けて落ち込まないでほしい。
作者が歩んで来た道と全く同じ道をゆくのだとしたら、それは負けたのかもしれないけれど、全く同じじゃないだろう? 作者が何か力を、学びを得た時間、貴方は別の何かを得ていたはずだろう? 貴方が持ったそれは、作者が一生かけても持てない武器になりうるのだから、それで戦えばいいんだ。負けじゃないんだ。
ナンバーワンよりオンリーワンみたいな、そんな浅いことが言いたいんじゃなくて。『ルックバック』の主人公藤野だってそうじゃないか。文献や資料を引っ張り出して講釈垂れられる才人でもなければ、京本、京本以上の画力を得られた鬼才でもない。けれど、読者の大半と似た彼女の後ろ姿は美しかったじゃないか。故に、彼女に似た貴方もきっと美しいんだ。
頑張れない自分が苦しいなら頑張ろう。自分にもそう言い聞かせます。暑くてやってられないって? 冬になったら今度は寒くてやってられないって言うぞ。あんたなら今日からできる。できるって。
でも私も、洋画とか見て知見を広げたいな、とは思いました。引き出しは多いに越したことはないですしね。
机の端に追いやられた電気代の支払い用紙、支払い期限今日まででした。あと数十分しかないよ、チャリ飛ばしてコンビニに行ってきまする。